カメラを止めるな!【リズミカルさと爽快さ。ホラーじゃないホントのことさ】
2年前に口コミで広がったアレと同じ・・・・むしろそれ以上の勢いで話題と人気が広がり、未だTV露出が続き、上映館は増える一方。
100日超ロングランな勢いの『カメラを止めるな!』。
最悪な状況(お察しください)で観に行くのはさすがにカンベンなので、落ち着いてきた頃を狙って観に行きました。
なお、今回はちょっと背伸びしてネタバレもありますので、予備知識無しで観たい方は、読まないようにお願いします。
『ゾンビ映画の撮影をしていたらホントにゾンビがやってきた!!』を軸にしたストーリーの今作。
・・・これができる限りネタバレを避けたあらすじなんですが、これでは意味が分かりませんよね。
今作の魅力は、その『軸』の周りにあるものです。
何が言いたいって、上で書いたあらすじはただの氷山の一角に過ぎないワケです(30分超というずいぶんとデカい一角ですが)。
今作、大雑把に分けて2部構成になっています。
ただ、第1部と第2部の温度差が激しいんです。
全く別物の映画なんです。
ここから平気でネタバレしていきます。
まずは第1部。
内容としてはゾンビ映画。一切カット割りの無いワンカット風で、程よく内容があって程よくスカスカしている感じで、正直私が大好きなホラーです。
ワンカット風の作風はかなりおもしろく、リアルタイムでストーリーが進んでいるような臨場感が、非現実的な『第1部』にリアリティを与えていました。
正直、ちょっと怖かったです。
また、この第一部のポイントのであろう、解像度が荒くてギクシャクした異様にクオリティの低い映像に、これまたクオリティの低いゾンビ。
それに、作中至る箇所に明らかにおかしい描写があります。例えば、音声役のおっさんが突如挙動不審になりだしたり、 ちょこちょこ妙に長い間があるシーンがあったり・・・。
おかしな描写なんかはもはやマイナスポイントにしか思えませんが・・・・・実は、これら全てにしっかりとした理由があるんです。
そして『第1部』の壮絶で残酷なクライマックス、そしてスタッフロールの後に現れるタイトル。
いや『カメラを止めるな!』じゃないのかよ!!!!
そして、第2部が始まるのですが、なんと始まるのは第1部の後では無く、そこから1ヶ月前さかのぼって始まります。
市販のハンディカムで撮ったような第1部とは一転したちゃんとした作品(言い方が悪い)がしれっと始まります。
多くのテレビの再現VTRの監督を手掛けてきた、仕事も家庭も万年2流の意志の弱い映画監督のおっさん。そんな彼が顔なじみのプロデューサーから「ゾンビ映画専門のチャンネル設立記念で短編映画を作ってほしい」という依頼を受けます。
尺は30分。しかも1カット録りノンCMの生放送。まさに無茶ぶりも過ぎる程の企画をほぼ丸投げで押し付けられ戸惑うおっさん。
そしてタイトルがドン。
今から本編かよ!!!!
つまりは第1部がオープニングで、第2部が本編と言う感じです。
オープニングとは全く異なる本編ですが、登場したキャストが全然違うキャラクターで登場します。
本編の始まりの地点では、コレがオープニングと直接繋がるストーリーなのか、はたまた全く異なる世界のストーリーなのかは分かりませんが、ストーリーが進むにつれ、謎は次第に明らかになっていくワケです。
今作の上映時間は100分無いくらい。さらにオープニングが30分強ある為、本編は1時間もありません。
すると必然的に本編がギュウギュウになり、キャラクターを深く描くことはできませんし、まともに『間』の演出もできません。
ただ、今作はその短い尺を上手くまとめていて、上で書いてきた謎の解明や、キャラクターの描き方がかなりリズミカルになっていました。
今作は意外とキャストが多いです。尺が短いので、当然丁寧に描くことができるキャラクターも限られます。
しかし、今作はいわゆるステレオタイプのキャラクターで固めていて、登場人物全てが外見通りのキャラクターになっています。
だから一部キャラクターの紹介ををワンシーンで済ませられていて、その分オープニングの謎解明に時間を費やすことができていました。
キャラクターの描き方も凄い今作ですが、見どころはやはり多くの方が挙げている通り、クライマックス以降の次々に明かされていくオープニングの謎です。
クライマックスはオープニングの『ONE CUT OF THE DEAD』を別視点・・・つまり製作側からの視点で描くものになっています。
オープニングの「なんで!?」と思った展開全てにしっかり筋の通った回答が用意されていて、それが明かされるときの「なるほどなー」感がとてもおもしろかったです。
また、リズミカルさはクライマックスで一気に加速し、ノンストップで進む感じが今作のコメディ要素を引き立てていました。
また、生放送という失敗が許されない状況が、オープニングのとはまた別の臨場感を出していて、結末はそれなりに分かっているとはいえ、ハラハラドキドキしながら観ていました。
今作が結局どういう映画かと言うと、『結末を最初にバラした上で、それに向って進む物語』です。
言ってしまえばよくある映画です。
同じシーンをクライマックスで違う視点で描く。それ自体はたまーに見かけます。
今作もそういう類なんですが、上でも書いた通りオープニング(結末を最初にバラす)と本編(それに向って進む物語)の作風が全く違うんです。
今作がウケている理由って、そこだと思います。
途中で作風をバッサリ変えるというアート作品的で分かりづらい意思を、それなりにベターな手法で包むことで『独特なところがおもしろい作品』に仕上げているんです。
ちなみに私がこの作品がどういう話なのか予想したかというと、『ゾンビ映画を撮影していたらホントにゾンビが出てきた・・・という映画を撮っていたらホントにゾンビが出てきた!』という感じ。
「こんなんじゃあ大しておもしろくないんだろーな!!!」とか思ってたらしてやられたクチで、クライマックスは(座っていた席が私一人だったこともあって)静かにはしゃぎながら観ていました。
2つの視点で同じ時間を描いておきながら、いずれも主観的な作りになっているというのが、一番のインパクトした。
ただ、そう言っておきながら粗探りのケチをつけるのがこのブログの悪い所で・・・。
クライマックスこそ盛り上がって楽しいのに、エンディングが大人しすぎたかな・・・と思いました。
クセの強いステレオタイプなキャラクターを用意した今作。エンディングだからやれることやっちまえ!!とかやってくれると思いきや、
みんなが一つになった!やったー!あはははは!!
っという終わり方。
本編のテーマ性としては物凄く正当な終わり方ですが、クセまみれの作風なので、そこあっさりしちゃうのねという終わらせ方は結構物足りなかったです。
あと、コレは特に個人的なんですが、「また観たいか」と言われると微妙な感じです。
初回のインパクトが凄い。・・・とはいえ、
それは何も分かっていない初回の話であって、全部知っている状態の2回目はそんなにおもしろくないんじゃないの?
とか思って2回目は無いなって思っているのが現状です。
今作、初回がめちゃくちゃおもしろくて、騙されようが騙されなかろうが、種明かしのリズミカルさには驚きだと思います。
ただ、何度も観たい!というのには意見が分かれる感じで(そもそも同じ映画を複数回観ること自体珍しいですが)、ある意味人を選ぶ映画だと思います。
また、オープニングはホントに手持ちカメラで撮っているので、手ブレ上等ピンボケバリバリです。・・・酔います。
私、寝ころびながら(自慢)とはいえ一列目で観ていたので、めちゃくちゃ酔いました。でも劇場を出ないでください。オープニングが終われば普通になるので。
そんな今作、文字通りロングランの大ヒットしています。ガヤガヤしている時に観るのは禁物ですね。
落ち着いてきた時期に、レイトショーだとかで観るとおもしろいかなーって思います。
だってホラ、複数回見てる人多いからさ・・・・。
映画『カメラを止めるな!』アツアツファンブック 『カメラを止めるな!』を止めるな!熱狂のポンデミック
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/12/05
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 出版社/メーカー: TOブックス
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: DVD
- クリック: 81回
- この商品を含むブログを見る
ちなみに私、オープニング終わりで本気で吐きそうになってました。
でもビールは美味しかったです。