えいがきのえいが【90年代生まれ視点の映画レビュー】

90年代生まれ視点の映画レビュー 当ブログは個人的な意見をバカ正直に綴ったもので、映画の品質を保証するものでもありません。映画を否定しても、その映画に関わった人物を否定しているのではありません。例え人をバカにしても、それはその人を尊重した上での行為です。

億男【友情は丁寧に描いて・・・】

借金3000万円を抱える男、一男が、宝くじで3億円を当てた。

大学時代の親友、今では大金持ちの九十九に相談したら、なんと彼は一男の3億円を持って消息を絶ってしまう。





良太郎もとい佐藤健主演で結構テンションは上がりましたよ。とはいえ結末が容易に予想できたので、ホントは今作はパスするつもりでした。

ところがしゃべくり007で「あんなもの」を見てしまったのが運の尽き。ノリノリで観に行きましたよ、ハイ。







今作はいわゆるヒューマンドラマ。内容はハイテンションな予告とは全く違います。



それに作りも独特で・・・というより、古臭いです。

ポン、ポン、とストーリーにしっかりと区切りをつけて、リズミカルさをあまり考慮していない作りになっています。

私としてはむしろ大歓迎で、ステップを踏みながら、主人公が何かしら知識を得る展開は楽しかったです。

ただ、それがあまり高評価を得られなかったようで、テンションが高くてエンターテイメント性のある感じの予告を観てつられてきた人たちが置いてけぼりを食らっていた気もします。



今作は「金とはなんじゃらほい」をテーマに、一男が九十九とその周りの人物達のそれぞれ異なる金への解釈を知り、成長して行くストーリーです。



ただ、私が一番インパクトを受けたのは、中盤に展開される一男と九十九の大学生時代のモロッコ旅行の展開でした。

一男と九十九の心情の変化・・・の『きっかけ』となるのがこの展開の流れです。



また、主人公の親友という立場でありながら、ミステリアスな九十九のキャラクターを明らかにするものにもなっています。

そこから一男と九十九の友情の深さや、『なぜ一男は九十九を信じ続けるのか』も明らかになっていくワケです。



こんなカンジに、主人公の心情を後を追う形で描く手法になっていて、つまりは『客観的に観せられる映画』というわけです。







そんな今作ですが、上で書いた事から考えられる通り、共感も無いし、盛り上がりも無いし、どんでん返しも無いし、衝撃的な最後も無いです。流行りに乗らず、ずーーーっと平坦に話が進み、ぱったり終わります。



私はこの映画は普通に良かったです。平坦なストーリー好きなので。



ただ、平坦な作風にしてしまうと、必然的にキャラクターの感情が描きにくくなります。すると、各キャラクターを描くだけにもかなりの尺を使う必要が生じてしまい、ましてや今作、一男の心情を『後を追う形で描く』という、これまた時間のかかる手法を取り入れているワケです。



そのため、(九十九は一男とワンセットなのでともかく)せっかくお金の意味を教えてくれるという重要な位置付けをしたキャラクターがよく分からない存在で終わっていました。

『お金とはなんじゃらほい』を説明して消えていくキャラクター達。結局それだけなので、ただ説教臭いというイメージで終わらせてしまうのは何だかな、というカンジです。





今作、一男と九十九がメインとなる展開はどれも素晴らしいと思います。

ただ、お金関連がメインとなる展開がとことん普通で、良い所と比べた時の落差が大きいです。

億男』のタイトルなのに、お金関連が「なるほどね」程度で終わってしまうのは、ちょっとどうかなって思います。

・・・というのも、今作のメインテーマはお金ではなく友情であって、そうなるのも当たり前ではあるんですね。





じゃあどうしろと言われても何も思い浮かばないですし、これが正解なんだと思います。

モヤモヤする作品だけど、それ以上良いものにするアイデアが思い浮かばない。そんな感じの映画でした。

つまりお金ってこういうものなんですね・・・・ってか。







億男 (文春文庫)

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億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション

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もうホント大画面で佐藤健を拝めただけで私はお腹いっぱいですよ、ねぇ高橋一生さん。