えいがきのえいが【90年代生まれ視点の映画レビュー】

90年代生まれ視点の映画レビュー 当ブログは個人的な意見をバカ正直に綴ったもので、映画の品質を保証するものでもありません。映画を否定しても、その映画に関わった人物を否定しているのではありません。例え人をバカにしても、それはその人を尊重した上での行為です。

ブラックパンサー【シンプルなストーリー、流行りに逆行するストーリー】

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の公開が近づき、MCUの一端の終止符が打たれる(休止するとは言っていない)前に、『シビル・ウォー』に先駆けで登場した、未知の国、ワカンダの王子、ブラックパンサーの単独映画が公開。 タイトルはそう、 ブラックパンサー そのまんま。


Marvel's Black Panther: The Art of the Movie


物語は『シビル・ウォー』の直後、宇宙からやってきたすっごい物質『ヴィブラニウム』により、FF15みたいな超未来的文明を築き上げた王国『ワカンダ』が舞台。 時系列的にはピーター・パーカーがニューヨークで『このあたり』の活躍をしている頃でしょうか。

ストーリーをざっくり

父親を亡くし、傷心のままワカンダへ帰郷したティー・チャラ=ブラックパンサー。 王の息子である彼は、即時に王となりざるを得ませんでした。 しかも、王座に座ってみると分かってくる、自分の身の回りのクソっぷりにビックリ。 同時にヴィブラニウム大好きおじさんもぶっ殺さないといけない。 さあどうしましょう。 ・・・・・・おや?ヴィブラニウム大好きおじさんの仲間にワカンダ人っぽいのがいるぞ?

シリーズ何たら作目の割に、ストーリーがとてつもなく簡単です。 複数のテーマが絡まるスタイルの映画が多いこのご時世ですし、ついこの前ピーター・パーカーの青臭い成長だけを描いたばかりなのに、いきなり国王にされてプレッシャーに見舞われる上、面倒ごとに巻き込まれてあたふたする王様の物語だけをするって、中々挑戦的だと思います。

しかも、今作は珍しく、他の単独映画の主人公は一切登場しません。 単独映画なんですし、むしろこれが当たり前なんですけどね・・・・。

なんたって王ですからね、。 王の力さえあれば、他ののヒーローの力も、サブキャラのサイドストーリーなんて必要ないんです。


2ケタ作品数のあるシリーズものとしては、かなりトガったスタイルで制作された今作。 なんか・・・・すっごい懐かしい気持ちになりました。

今作、似てるんですよ、サム・ライミ版『スパイダーマン』に。 「大いなる力には、大いなる責任が伴う」とか、アクションシーンとか。

王という地位=大いなる力を手にした(してしまった)ことによる、国を背負い、『ア』から始まり『リカ』で終わる場所に住む人々世界中の人々を陰で守るという使命=大いなる責任を負うティー。 ふんわりとしていますけど、個人的にこれに似てると感じました。

この要素はまぁ個人差は出るとしても、アクションシーンに関しては似てるなーって思った人が多いと思います。

意外とクモ糸をあまり使わず、短距離をピョンコピョンコ飛び回るサム版ダーマに似てるんです。 格ゲーみたいな横視点のカメラアングルが似てるんです。

観たら「あぁーっ」ってなります。 地味なアクションしかできないヒーローをどうしたら超絶カッコよく描くことができるかを研究して研究して・・・・・。 それがしみじみ伝わるカッコよさ。なんか、物凄い遠回しに、サム版ダーマの再来を見せられた気持ちになりました。


いやぁ、良いですよ今作のアクション。 比較的やってることはそこまで大きい規模ではないですし。

とはいえ、規模が小さいからと言わせて地味とは言わせないのがディズニー。

今作のブラックパンサー、なかなかの私好みでした。

・・・・・・・・いいですよね・・・・・・光るの・・・・・・。 紫ですよ紫、紫に光るんですよ。超絶カッコイイでしょ。

衝撃を与えられた箇所が紫色に光る。その光が何なのかって、吸収した衝撃ですよ。 「今だ」って時に、吸収した衝撃を一気に放出して、周りの敵をぶっ飛ばす!!

「テメーなんで光ってんだよ」に「我々にもわからんのです」で答えず、ちゃんと理由付してくれるのは律儀ですよね。嬉しいです。

また、今作はスーツにこういう仕様がある為か、作中でアイアンマン以上に攻撃されてるシーンが多かった気がします。

というか、カッコいいんです。攻撃を受けてるシーンが。 やられ方が上手いというか、やられるときはしっかりやられるし、平気な攻撃には物凄いピンピンしてるという、あざとらしさの無さが結果的にカッコいいんだと思います。

身軽なアクションをするブラックパンサーですが、やられ役もしっかりこなすというのは、さすが王・・・違う、ヒーロー映画としてはホントに素晴らしいと思います。


今作は、ワカンダというまともにロケなんぞできないような場所が舞台ですので、CGこそは盛り沢山な印象です。

ただ、ストーリーやアクションの全体的なものは、キャップ2に並ぶくらいのシンプルさでした。

戦いのルーキーである故に悩むスパイディとは対象的に、戦いのベテランである故に悩んでしまうブラックパンサーというのはなかなかおもしろかったです。 自分のことで悩むという共通点があれど、しっかりと差別化できていたと思います。


今作の一番感心したことなんですが、今作、アクションよりストーリーに重きを置いているんです。

上でも書いた通りシンプルなストーリーの今作ですが、それを詳細に、かつ客を飽きさせることなく描けているんです。 悩めるヒーロー。よくある要素ですよね。ただ、その悩ませ方、決心のつけさせ方にしっかりと芯があり、どこぞのガワだけ盛ったハリボテとは全く違う仕上がりになっていました。

拍手したくなりますよコレ。

クライマックスでよーく分かりますよ。 凄くしっかりとストーリーを固められておるんです。 使い捨てヴィラン悪役のオリジン的描写なんかも、オープニングからクライマックスにかけて緩やかに語っていきますし、ティ・チャラの成長劇も、一つ一つ意味を込めて、ヘリクツ一つ無く芯の通ったものになっています。

まあ、クライマックスが地味だの、子供に向かないクライマックスだの言われてしまえばその通りですけど、CGで何でもできてしまうこのご時世に、あえてこんな感じの映画を作ってしまうってのは、私個人としては凄くおもしろかったです。

ただ、予告とは全然雰囲気が違うっていうのは、ガッカリ・・・と言うわけではないですが、置いてけぼりを食らったようには感じました。 アクション面では、よくある見せ場を予告で全部見せてしまう的な感じになっていたのは事実ですし、予告はもうちょっと別の方向性でやってほしかったってのは思いました。


微妙な出来の作品が多いこのシリーズですが、今作に関しては、普通に良かったと思います。 マシ・・・ではなく、普通に良かった・・・です。 ただ、やはりキャップ2には数歩届いておらず、普通止まりな感じでした。

とはいえ、これまでのMCUとは全く方向性の違う舞台設定や音楽はかなり印象的で、シリーズ中ではかなり主張している作品になっていました。

今度のアベンジャーズ3では、またスーツが変わるようで、紫色に光る以外の能力が追加されるのかどうか、また、どんな活躍をしてくれるのかが楽しみです。


ブラックパンサー (ShoPro Books)

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